真夜中の太陽
低く、鋭い、女の人の声だった。
『ヒトの男に手ぇ出してんじゃねぇよ!』
そう吐き捨てると、電話は一方的に切れた。
プーッ、プーッという音が流れる。
あたしは呆然となって、電話を耳から外すことができずにいた。
些細な身動きさえもできず、心臓の音だけが大きく聞こえる。
―――今、『ヒトの男に…』って……。
相手の声が何度も頭の中で繰り返される。
カミソリの残像と、永輝の笑顔が、ダブった……。