真夜中の太陽
「そうよねー」
諒子と村岡くんの、ぎくしゃくした笑い声が響く。
だけど、あたしの耳に笑い声など聞こえてこない。
『人の男に手ぇ出してんじゃねえよ』
『あたしと間違えて、手ぇ出しちゃダメよ』
あの電話での低く鋭い声と、今耳にした可愛く甘える声が重なる。
『……どうかされましたか?じゃないわよ!!』
あの日のバイト中に、あたしに怒鳴り込んできた女性客の怒声も重なる。
電話とカミソリはかんなさんじゃないかと疑っていた。
だけど、雑誌が破れていた、食べかけのキャンディが入っていたと怒鳴り込んできた女性客はベツモノだと思ってた。
あの女性客…、帽子を目深に被っていたあの女性客はかんなさんだ。
「…あたし、発注の送信しなきゃ…」