真夜中の太陽

永輝は振り払うわけでもなく、優しく手を解こうとする。

かんなさんの白い腕に、無数の切り傷が見える。


リストカットの痕……。



「柚羽……」



不自然にはだけた永輝のシャツ。

わずかに覗く胸元に、真新しい、うっ血した小さな痕が見える。

そのままかんなさんに視線を移すと、かんなさんの胸元にも全く同じものがあった。



「あたし、帰るね」

「柚羽!」

「……ごめんなさいねぇー」



かんなさんの勝ち誇ったような笑顔。

あたしを引きとめようとする永輝。


今すぐ、ここを離れたかった。


そばにいないといけない存在。

それは、ただそばにいるだけではない。


『そういうこと』も、しているんだ。

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