真夜中の太陽
「半殺し……」
あたしの身近ではまず聞かない言葉。
そして、この先もずっと、おそらく縁もない状況。
そんな世界で永輝は生きてきたんだ。
そして、かんなさんも、そんな永輝のそばにいたんだ。
「永輝くんを助けに行った先代の総長は相手をボコボコにして年少行き。永輝くんは自分も出頭しようとしたけど、それを先代の総長に止められたんだ」
「…じゃあ、永輝はその総長の後を継いで…」
「うん。新しい総長になった。その人はもう年少から出てきてるんだけど、永輝くんはそのことを今も負い目に感じていて、姉さんを強く振り切ることができないんだよ」
目の前をいろんな車が通り過ぎる。
ドレスアップした、遼太郎くんと似たような車。
マフラーの爆音を響かせながら走るスポーツカー。
いろんなタイプの車を同時にたくさん見るのは初めてだったけれど、あたしの心の中は感情もなく、ただ、無になっていた。
「…永輝くんが離れようとすれば姉さんはリストカットをする。そのことを先代の総長が知ったら悲しむから……。だから永輝くんは姉さんのそばにいるんだ」