真夜中の太陽

「……ありがとうね」



そう言った永輝に、あたしは何も言葉が返せなかった。


踵を返して、再びあたしに向けられた永輝の背中。

少しずつ……、その背中は遠くなっていく。



本当は……――。

今すぐ追いかけて、このまま永輝を行かせたくなかった。


『行かないで』って、たくさん泣いて……

『大好きだよ』って、気持ちを思い切りぶつけたかった……。



でも……――。

自分の欲望のまま行動に移してしまったら、

かんなさんを傷つけ、永輝を苦しめてしまう。

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