真夜中の太陽
『来ないで……』
力なく首を横に振る。
睨みながらも、その目には涙が浮かんでいたんだ。
それから永ちゃんの家に行って、柚羽さんのことを話すべきだと思った。
でも話してしまったら、永ちゃんはもう二度とあたしの元に帰って来ない。
そして、永ちゃんにとってあたしは、永遠に憎悪の対象になってしまう。
永ちゃんの部屋で見つけた小さめの指輪。
それはあたしが永ちゃんに買ってもらった安っぽいデザインのファッションリングなんかじゃなくて……
正統な結婚指輪だった。
指輪の内側には永ちゃんの名前と、永ちゃんの誕生日が刻印されていた。
左手の薬指に指輪を通したけれど、きつかった。
同時に思い知らされる。
この指輪はあたしのものなんかじゃない。
柚羽さんのものなのだと……。
柚羽さんは灰皿を、永ちゃんは結婚指輪を。
もう会うこともないのに、二人は離れたところで互いを強く思い合っている。