真夜中の太陽
「あぁ、柳さん。オレ、車だし、カラオケボックスの方に行ってみるよ」
「あっ、いいです!大丈夫です!」
結崎さんを巻き込みたくなくて、必死になって断る。
飲み会のことといい、これ以上、結崎さんに迷惑をかけたくなかった。
「いいから。どんなカギか柚羽ちゃんしか知らないから一緒に行こう」
あの、優しい笑顔。
一瞬でも、嫌な顔ひとつしない。
この人は優しすぎる。
諒子が「いいんですか?」と、ゆっくりとあたしの手を離す。
結崎さんは表情ひとつ変えずに頷くと、あたしに車に乗るように促した。
初めて乗る結崎さんの車。
飾り気ひとつなく、車内でよく見かける芳香剤なんてものもない。
車の中は結崎さんの匂いでいっぱいだった。