真夜中の太陽
車の中でずっと漂い続けている、結崎さんの優しくて切ない香り。
不思議だね……。
ちょっとしたことで、あたしの胸はいろんな形でうずく。
悲しいわけじゃないのに、泣きそうになったりする。
切なくて、苦しくて。
人を好きになったのは結崎さんが初めてじゃないのに。
それなのに、こんなにも思いが募るのは初めてだった――。
「……わちゃん。……柚羽ちゃん」
肩を軽く叩く手と呼び声で目が覚める。
そこにはあたしのアパートが見えた。
アパート……。
どうして結崎さん、あたしのアパート知ってるんだろう。
「着いたよ」
「あっ。……本当にありがとうございました」
素朴な疑問を突きつけることなく、あたしは軽く頭を下げた。