真夜中の太陽
「あの、伊織くんは?」
唖然としているあたしに、結崎さんは微笑みかける。
「あぁ、昼頃、オレの携帯に電話があって……。昨日の夜から熱があって代わりに出て欲しいって」
「あ、熱…。あー、あたしは、志穂ちゃんがサークルが長引きそうだからって、代わりに……」
言い訳しているみたいだった。
「まぁ、とりあえず着替えたら?」
「は、はいっ」
促されるがままに無言で更衣室に入る。
心臓が物凄い速さと強さで波打っている。
制服のボタンを留める手が震えて、うまくできない。
まるで、一人で着替えが出来るようになったばかりの幼い子供のようだ。
着替えながらいろんなことを思い出す。
告白したこと、結崎さんが辞めてしまうこと、彼女がいること。
肩に、見えない重い空気がのしかかる。
最後の日に結崎さんと会えて嬉しいのに、憂鬱だ。