真夜中の太陽
「いいんですか?こんな時間にウチに来て」
「いや、だから、いないって。彼女は」
もう一度、彼女の存在を否定するけれど、それは優しいウソなのだと思った。
苦笑いしながら否定する結崎さんを見て、あたしはそれ以上のことは聞かなかった。
「…難しそうな本がいっぱいだね」
結崎さんがそう言って立ち上がり、部屋の片隅にある本棚へと行く。
一冊一冊に目を落としながら、指で辿っていく。
「ほとんど、大学の教科書です」
「へぇ。……あれ?」
辿っていた指が、ある本のところでピタリと止まる。
結崎さんは、その本を丁寧に取り出す。
『イタリアガイドブック』