ショート・ミステリーズ!短編集その2
東京駅で男を降ろした。

「運転手さん。どうもありがとう」

若い男は手を振った。

中村は軽く会釈して、車を発進させた。

彼は冷や汗をかいていた。いま車のトランクには、彼の不倫相手の死体が入っていた。

地方まで走ったあと、偶然不倫相手と遭遇した。口論の末、殺してしまった。

焦った彼は、死体をトランクに押し込んだ。

帰り道にある墓地には古い井戸があるのを彼は知っていた。

そこで死体を処分しようと思っていたところに、あの男が乗り込んできたのである。
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