ショート・ミステリーズ!短編集その2
ドアの外にいた人は、シンジではなかった。

黒いスーツを着た男。手には革のバッグ。がっちりと固められた頭髪。作られた笑顔。

わたしは心の中で、チッと舌打ちをした。面倒なことになった。

笑顔をキープしたまま、男が言う。

「はじめまして。メディア・コーポレーションの玉城と申します。今日は福島リエ様だけに素敵なお話をしに参りました」

福島リエとは、わたしのことだ。

思った通りだ。よくある訪問販売だった。気を抜くと、何を買わされるかわからないのだ。
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