ツンデレ★カレ
「で、来るもの拒まず去るもの追わずって感じなわけ。
本気ですきになったことなんて無いし、それだから、俺を助けてくれて、俺を本気で思ってくれる人なんて、誰も居な「永野くんは?」


輝くんに対してヘラヘラしてる奴としか印象になかったのに、
急に淋しそうな顔をされて、つい口を挟んだ。



「永野…?
だって、永野怖えもん。
怒るし蹴るしさぁー」


あたしはレストランの前で会ったことを思い出した。


「それは、輝くんのことを思ってるからこそじゃないのかなぁ。
どうでもいいとか思ってたら、そんなこと絶対にしないし、
必要以上に一緒になんか居ないと思うよ」


「そーなのかなぁ…」


「そうだよ!
あたしも、ちょっと自惚れしてるだけかもしれないけど、美紗はさ。
本気で怒ってくれるし、ちょっと怖いけど…」


輝くんは暗闇の中で少し微笑んだようだった。


「俺ー。
まいかちゃんのことなら、本気ですきになる」


「…え、ちょ…」


「高校近いし、また、会えるかもね…
っていうか、会いにいくから。
おやすみ」


くすっと笑って服についた砂を払って立ち上がる。
なんとなくあたしもつられて立ち上がる。


「ほんと…可愛い…」


こんなこと言われたことのないあたしは尋常で居られるわけなくて、
俯いていると前髪を掻き揚げられ、
額にやわらかい、感触―…。


「おやすみの、チュー」


それだけ言うとさっさとホテルの中に消えていった。
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