彼方【短編】
「ちょっとさっきの数学で
分かんない事があったから教えてほしくて…
栗林さん分かる??」
「夏月さんなら私に聞かなくても
わかるんじゃないの??」
「うん…
ここだけちょっとボーっとしちゃって
聞いてなかったんだ。
だから教えて?」
屈辱。
この二文字。
本当はわかってる。
たとえ授業を聞いてなかったとしても
分からないはずはない。
それをわかってって
あいつらはあたしにやらせてる。
普通に話すんじゃなくて
いつもは優位な立場にいる
あたしのプライドを傷つけるために。
きっと栗林も気づいてる。
「はぁ…
わかった。
ここは、この式にxを代入して…」
「うん…」
悔しい…
もともと1人で行動してたあたしは
栗林と同じくらいクラスでは浮いていた。
そんなあたしをグループに誘ったのは
香奈と美菜子。