また逢う日まで
一行は見当たらなかったが自分が探している宿にようやくたどり着けた。



―亭月鏡―


古くからある旅館で趣あるたたずまいだ。



「やぁっと着いたぁ。」


ヘナヘナと入り口で座り込んでしまった。



「あららぁ。どないしはりましたん?もしかして今日のお客はん?」




声をかけてきたのは薄桃色の着物を着た女性だった。


歳は20代くらい。



さっきの牛車に乗っていた女とは声色が違うので別人だ。




女将にしては若すぎるだろうと思うくらい清楚で綺麗。


「あ。はい。八雲です。」


「そうどしたん。うちが女将やっとります、夏澄いいます。」


「え?ずいぶんお若いんですね。」

夏澄はキョトンとした。
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