また逢う日まで
“あの場にいたのに気付かれていた?マジかよ。しかも何で塀の上にいたのに俺の前に現れたんだ?”


悟ったかのように女はニッと笑って言った。


「あ〜。うちがあんさんに気付いたのは気配でわかったんどす。」


しかめっ面で女を見る八雲。


「…あんまり深く考えてるとハゲますえ?」


「ハ、ハゲ?」


思わずマヌケな返事をしてしまった。


「プッ!アハハー!なんちゅうマヌケ面なんやろ!おかしゅうてお腹が痛いわぁ!」



涙まで出るほどに大笑いする女を目の前にして未だに現状を理解できていない男が一人。


それに気づいた女が八雲の前に手をかざして謝った。


「堪忍な!悪気があったわけやあらへんで。予想外の反応やったからつい笑ってまったさかい。」


「いや。もうどうでもいいっす。」


「あんまり驚かれへんね。普通ならその場からいなくなってるとこどすえ。」


八雲も本当は一目散に逃げたかったが腰が抜けて動けなかったなんて口が裂けても言えない。
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