また逢う日まで
「ちょっと。あんま、勝手にベラベラとしゃべらんといておくれやす。うちがやりにくくなりますやろ。」


旅館から少し離れた小道をどんよりしている薩摩の背後から声がした。


気配に気付いていたのか、冷めた声のした方へ振り返える。


声の主は薩摩を睨みながら立っていたのは夏澄だった。



「そないに怒らんでもええやろ?あんたはんのしていることがバレるわけやないんやし。やけに人間にこだわるんやね。何かあるん?」



薩摩が目を細めて言い含めて聞いてきた。


「あんたはんには関係あらしまへん。何だってかましまへんやろ!」


「さよか。まぁ。何でもかまへんけどあんまり私情を挟みすぎないようにしなあきまへんえ?」

ニヤッと薩摩は笑い、暗闇に消えた。


夏澄はゾッと背中に冷や汗が流れる感覚を感じながら薩摩を見ていた。



「何や。あんたかて自由になりたいんやないの?こないなこと続けてても意味なんかあらへん。そやろ…?」


誰もいないのに独り言を呟いて夏澄は夜空を仰いだ。
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