また逢う日まで
“初めて?珍しい。今時、原稿用紙を知らないなんて。今は原稿用紙よりはパソコンの時代だしなぁ。アナログ派ではないか。”


「これに書くん?」


はっとして薩摩を見るとシャープペンを持って原稿用紙に書き込もうとしていた。


「わぁー!ダメです!原稿用紙は限られているんですから止めてください。」


「ブー。ええやないの。ケチ。」



「はぁ。人の気も知らないで。」


ボソッと八雲は呟く。


「何か言わはった?」


薩摩は八雲の呟きを聞き逃さなかった。


「え?な、何も言ってませんよ。」


「ふぅん。さよか……。」


怪しいと疑いの目で見つめる薩摩。


平常心を保ちながら答える八雲。




その時、辺りが急に暗くなった…。


「何だ?霧か?薩摩さん。大丈夫ですか?」


しかし、薩摩の返事はなく八雲の声だけが部屋に虚しく響く。


「薩摩さん?薩摩さん!?」


薩摩の名を大声で叫ぶと同時に辺りは曇りのないきれいな空間と化していた。


そこに薩摩の姿はなかった。


< 59 / 93 >

この作品をシェア

pagetop