ひまわり


目撃者がいないように、辺りを見渡して部室に向かう。


誰かが歩いてくると、廊下の壁に隠れて慎重に進んだ。


確かに、部室の辺りは殆ど人がいなかった。


校舎のほうで、賑やかな声が響いている。


ここまで来て、ようやくほっと息をつく事ができた。


「失礼します」


ゆっくりと部室のドアを引き、遠慮がちに中を覗き込む。


その瞬間に、埃の匂いと汗の匂いがあたしの鼻に入り込み、お世辞にも居心地がいいなんて言えるような場所じゃなかった。


「男くさいとこで悪いな」


鼻をつまんでいると、背後から先輩の声が。


慌てて鼻から手を離し、動揺して目を泳がす。


「椅子がないからさ、これにでも座ってよ」


そう言って、先輩が引っ張り出したのは、2つの箱だった。


それをひっくり返して、ふーっと、白い埃を吹き飛ばす。


「ゴホっ、ゲホっ!」

「あっ、ごめん。埃全部そっちにいっちまった」


先輩は謝りながらも、ケラケラと笑っている。





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