ひまわり


少し埃が落ちたところで、あたしに箱を渡してきた。


「さぁ、早速話しを聞こうか。
俺の貴重な自主トレ中に浮かない顔をしていた理由」


先輩の言葉にはっとした。


「すみませんっ。あたしってば、何も考えずにあんな所にいて……。
野球部の邪魔でしたよね」


「いや、大丈夫だよ。今日の朝練は休みだったし、俺一人でやってただけだから」


慌てたあたしに、先輩はあの爽やかな笑顔を向けてくれた。


「休みまでも練習してるんですね」

「当たり前。俺ら甲子園目指してるし。
それにキャプテンの俺が真剣な奴らの足引っ張るわけにもいかないだろ?」


先輩は棚に置いてあったグローブとボールを手に取って、ボールを壁にバウンドさせていた。


「はいっ、話して?ゆっくり聞いてやるから」


今度は、上へボールを投げながら、あたしにちらっと目を向けた。


あたしはギュっと制服の裾を握りながら、息をのみ込む。


鼻歌を歌いながらボールで遊んでいる先輩は、あたしの気分を和らげようとしてくれているんだってわかる。


何度かあたしに向けてくれる視線が、とても優しかった。


先輩に話したら、何かしらアドバイスもらえる……よね。


きっと――。



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