ひまわり


「そっか。
そいつさ、中学の時部活やってたの?」

「いえ、真由が何もしてなかったって言ってました」


あたしが言うと、『ふーん』と考えながら、体勢をまっすぐに整えた。


「そんなに野球が好きなのに、中学で野球をしてなかった理由もわかんないんだよな」


また、『はい』と頷く。


「お父さんとの大切な思い出で、体育の時にふと本気をだしてしまう……」


先輩は眉間にしわを寄せて考えてから、あたしに視線を合わせた。


「怪我でもしてるとか?」

「怪我、ですか?」


今度はあたしが前かがみになって、先輩に耳を近づける。


「そう。肘か肩を壊して野球が出来なくなったとか」


……怪我。


だから、あんなに怒ったのかな。


本当は野球がやりたくて仕方がないのに、怪我が酷くて出来なくなったの?


そんなこと、思いつきもしなかった。


「でもまぁ、ほんとのとこはわかんねぇよ?
ガキの頃練習したぐらいでそんな怪我するとも思えないし。何か他に理由があるかもしれないしな」


そう言って、今まで持っていたボールをあたしに投げてきた。


慌ててボールを受け取ると、ジンと掌に刺激が走った。




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