ひまわり


真由の表情は、いつものように見えたけど、あきらかに何か違ったんだ。


蔵島恭平の事で頭がいっぱいで、この時の真由の表情に、あたしは気づくことが出来なかった。


「あ、うん、ちょっとね。
走ったら、息が切れちゃって。さすがに、運動不足」


笑いながら言うあたしをよそに、真由の表情が一瞬曇った。


「どこ行ってたの?」

「っえ?職員室だよ。ほらっ、あたし課題提出してなくてさ、先生に怒られちゃった」


てへっと笑いながら、下手な嘘を並べる。


先輩と居た事は、まだ真由には言えない。


もうちょっと、真由があいつの事を受け入れてくれるまで、言わないでおく。


真由なら、必ず『蔵島君の事はほっといたほうがいい』って言うはずだから。


ただ、それだけで。


真由を傷つけようなんて、思っていなかったのに――。


「ならさ、なんで平岡先輩の後に、莉奈が部室から出てきたの?」

「……っえ?」



一瞬、目の前に砂嵐が起こった。




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