ひまわり
「そんなところにいないで、中まで入ってきなさい」
所在なくたたずむあたしに、優しい口調で言った。
通路の真ん中で、おじさんが手招きしている。
あたしは、躊躇いながらも一歩ずつ足を動かした。
おじさんは、あたしが歩く姿を目をたらして見ながら、ゆっくりと頷いていた。
「あの、あたし、すみません。
勝手に中を覗いてしまって」
あたしが俯き加減に言うと、あたしの肩におじさんの手が伸びてきた。
「座ってごらん」
穏やかなその声に、あたしの沈みきった気分が少し楽になっていた。
「恭平のお友達だね?」
「……っえ?」
「おや、違ったかな?」
まだ一度も会った事もないおじさんにそう聞かれ、あたしは思わず素っ頓狂な声を出してしまった。
確かに、初対面だった。
「恭平から色々聞いてるよ。
莉奈ちゃん、だったかな?」
あたしの名前を言われて、はっとした。