ひまわり
噂って、恐ろしいくらいに話しが膨れ上がってみんなに広がる。ほんっとにあり得ないって事まで。
それは、こいつが一番わかっていることだ。
噂程、怖いものはない。
「おまえなぁ、暗い顔しすぎだろ」
眉間にしわを寄せて俯くあたしの頭を、彼が軽く突いてきた。
「ダチと喧嘩なんてなぁ、誰だってするもんだろが。おまえの場合、噂が怖いんだろ?」
『別にっ』そう言おうとしたけど、あながち間違っていない事実に、あたしは唾と一緒に言葉をのみ込んだ。
「噂なんて、言いたい奴に好きなだけ言わしときゃいいんだよ。
それで、ダチが噂に流されるようなら、おまえらの友情ってそんだけのもんだったって事だよ」
彼に言われて、また恐怖が押し寄せてきた。
出来るだけ考えないようにしていた事なのに。
あの時、確かに数人のクラスメートがあたしの事を噂していた。
内容までは聞き取れなかったけれど、あの汚いものを見るような視線は、絶対に身の毛もよだつ事を言っていたに違いない。
ただでさえ不安なのに、これに噂までもがのっかってきたらと思うと、余計真由との距離が開いてしまう気がして怖かった。