ひまわり
「おせぇ」
よたよた歩きながらふと顔を上げると、教会の門に寄り掛かる蔵島恭平がいた。
最近の彼は、こうやってあたしの事を待っててくれるようになった。
どういう心境の変化かはわからないけど、彼なりの優しさだ。
毎日真由に振られるあたしを見ているから、きっと彼なりに気を使ってくれているんだと思う。
あたしがぶっきら棒に『ごめん』と返すと、彼は門の横から真っ赤な自転車を引っ張り出して、無言で歩きだした。
けれど、歩幅だけは、ゆっくり歩くあたしに合わせてくれる。
こういう些細な彼の気遣いは、時々感心するほどだった。
彼と隣同士で歩けるのは、裏門まで。
たくさんの生徒で溢れる校内では、必ず別行動というのは今でも変わりなかった。
あたしがどれだけ『別にいいのに』って言っても、絶対に彼が許すことはなかった。