ひまわり
昇降口まで、あたし達は色んな話で盛り上がった。
彼氏はいるのか、とか。
好きな人はいるのか、とか。
どんな人がタイプか、とか。
殆どが恋バナ。
真由といると、会話が途切れることなんてなかった。
そして意外なことに、あの可愛い真由に彼氏がいないときた。
そんならあたしに出来るわけもなく、ガクリと肩を落とす。
あぁ……
夢の制服デートは、夢のままで終わっちゃうのかな?
どんよりと重い空気を漂わせながら、よいしょと声を出して、昇降口で靴を履き替えた。
その時。
ふと、隣から香水のいい香りが。
ちらっと隣を見ると、あのヤンキー野郎。
近くで見るとさらにデカさを感じて、背の低いあたしは相当見上げないと彼の顔が見えない程だった。
それに、あの機嫌の悪そうな顔。
別に寒くもないのに、身震いしてしまう。
「あの人、蔵島恭平っていうの」
ヤンキー野郎がだるそうに歩いていく後ろ姿を見ながら、真由があたしに耳打ちする。
「あんな格好だからさ、近寄る人は少ないの。
いっつも一人でフラフラしてるし、一匹狼みたいなもん」
真由は肩をすくめて、
「まぁ、問題を起こしたこともないし、大人しいヤンキー」
と、付け足した。