ひまわり


全て忘れて楽な世界に行きたいのに、どうしても悲惨な現実から逃げる事が出来ない。


辛くて、悲しくて、泣きたくて。


一人になるのが恥ずかしくて、逃げたくて。


こんな高校生活になるなんて、夢にも思わなかった。


溜息しか出ない。


あたしは、布団の中で小さく丸まって膝を抱く。



その時だった。


ガラガラっとドアの開く音がしたと思ったら、すぐに黒い人影がカーテンに映し出された。


先生が帰って来たのだと思ってまた布団をかぶると、カーテンの向こう側の影がぽつりと話しだした。


「さぼりかよ」


その声に、あたしは勢いよく布団をはぐ。


カーテンのシルエットを見ると、それは先生の影なんかじゃない。


だらしなく制服を着崩してだるそうに立っているこの影は、彼のものだ。



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