ひまわり
上半身だけ起こして、その影を見て目を白黒させる。
「なんで?」
出てきたのは、こんな言葉だった。
まだ授業中なのに、なんでこいつがここに来るのか――。
あたしがかすれた声で聞くと、カーテンの向こう側でかすかに影が動いた。
髪をかきあげる仕草が、シルエットとしてあたしの目に映る。
「おまえが隠れるとしたら、ここしかねぇだろ。
たぶん」
そう言いながら、彼は隣のベッドに腰かけた。
一時の沈黙に、制服の擦れる音が妙に大きく響く。
グラウンドでは、どこかのクラスが野球をやっているのだろう。
ボールがバットに当たる心地良い音が、保健室まで聞こえてきた。
何からどう話せばいいのか。
頭がパニックになって、冷静に考えられない。
考えをまとめる為に、あたしのウエスト付近でだまになっている布団を丁寧に畳んで時間を稼ぐ。
すると、カーテンの向こう側の彼がまた小さく呟くように声を出した。
「おまえは、よく頑張ったよ」