ひまわり


「これからは、クラスの奴らに何を言われても、絶対に一人で悩まないか?」


そう言う彼の横顔は何時にもまして真剣で、あたしは彼から目をそらさずに、ただ『うん』と頷いた。


すると、何かを決心したように、彼が一度あたしを見下ろした。


そして、すごく優しい表情で微笑んでくれた。


彼が何を考えているのかわからないけど、その笑顔に安心した。


二人で廊下を歩くと、当然のごとくみんなの注目が集まった。


『え、なんで?』すれ違うみんなが、こんな顔をする。


それが、くすぐったかった。


彼の隣を堂々と歩けている嬉しさ。


口元が自然と緩んでくる。



教室までたどり着くと、後ろのドアの前で、彼が一旦足を止めた。


あたしも同じように、彼の一歩後ろで立ち止まり、彼を見上げる。


彼の視線は、教室のある所を見て、止まっていた。


真っ直ぐに、真剣に――。


教室には、まだ数人のクラスメートが残っていた。


その中に、放課後の計画を楽しそうに決めているあの三人組の姿と、部活に行く準備を始める真由の姿があった。



まさか……っ。


あたしは、彼の制服の裾をクイッと引っ張った。



< 148 / 339 >

この作品をシェア

pagetop