ひまわり
制服の襟を掴まれて、そのまま壁に押し付けられた。
「莉奈っ!」
「大丈夫だからっ!」
すぐに駆け寄ってきてくれた蔵島恭平に、あたしは声を荒げた。
「あたしは大丈夫。ありがとう。
今ここで、真実を話すから」
あたしの襟を掴む彼女の手が、さらにきつくなる。
だけど、あたしは真由だけに視線を向けた。
真由は、俯いて胸の位置で手を握っている。
「真由聞いて。真由を傷つけるような事してごめんね。あたし、何をするにも要領が悪いね……。
自分でも、呆れちゃう。
この前も、真由に内緒でこそこそと先輩に会いに行ったりしてごめん。
しかも、あんな嘘までついて……。
あたしね、あの日悩み事があって、教室に行きづらかったんだ」
「あの日……?」真由が、眉間にしわを寄せて呟いた。
「だから、考えがまとまるまで、グラウンドのブロックに腰掛けてた。
真由に、あたしが悩む姿を見られたくなくて。
真由、すぐに心配するから」
「悩みって……」
まさかあの時の……。 また、真由が呟いた。
「そしたら、自主トレ中の先輩に見つかって、悩み事があるなら人生相談に乗ってくれるって言ってくれたの。
真由の友達だから、特別だって。
あたし、バカだからさ、どんなに考えても全然答えなんて出なくてさ。
だから、少しでも答えが見つかればと、先輩にお願いする事にしたんだ。
真由に言えなかったのは、心配させたくなかったから。ただ、それだけだったの」
あたしが言うと、ようやく真由が顔を上げてくれた。
今にも涙が零れ落ちそうなくらい、大きな瞳に涙を浮かべて。