ひまわり
「病院では、携帯禁止っ!」
恭平から携帯を奪い取る。
「あーっ、もうっ!
やっぱ来るんじゃなかった」
恭平はイライラと貧乏ゆすりをしながら、腕を組んで椅子の背もたれに全体重をかけて座った。
総合病院は、かなりの人で溢れている。
早目に来たつもりだったけど、すでに予約の患者でいっぱいだった。
あたしに携帯を奪われた恭平は、欠伸をしたり頭をかいたり首の骨を鳴らしたりと、落ち着きなく動いていた。
「蔵島さーん」
雑誌に視線を落とすあたしの頭上で、看護師さんの高い声がした。
「やっとかよ」と、恭平がだるそうに立ちあがる。
相変わらず足を引きずって歩く音が、静かな廊下に響いた。