ひまわり
あたしに体は向けているのだけど、男の子は、たぶんあたしに気付いていない。
ただ、物音がした方に首を動かしていた。
男の子の視線はあっていない――。
だけど、何かを必死に見るように、音がするあらゆる方向に、小さな人差し指を伸ばしていた。
涙が出そうになった。
お母さんの肩を必死に叩いて、音がした方を何度も指さす。
「うん、まぁくん。いっぱい音がするねー。どんな音がした?」
「ガタン、ガタンって」
「そうだね、上手だねまぁくん」
お母さんに頭を撫でられた男の子は、誇らしげに笑っていた。
その天真爛漫な笑顔を見たら、さっき泣きそうになってしまった自分が間違っているような気がした。
彼は、目が見えなくたって胸張って生きてるんだもんね――。
眼尻にたまった涙を拭きながら、あたしは元の位置に戻った。