ひまわり
あたしが迷い込んだこの狭い道には、ぽつりぽつりと両端に木が植えてあった。
まばらに並ぶこの木々が、まるでトンネルのように太陽からの日差しを和らげている。
この都会に珍しく感じる自然が、あたしの心を癒してくれる。
意外と、穴場発見かも。
あまりの気持ちよさに、手を前に翳して空を仰いでいると、ふと、優しい音色があたしの耳に入ってきた。
その小さな音色に耳を澄まし、導かれるようにして歩く。
徐々に音がはっきりとしてきて、これはパイプオルガンの音色だとわかった。
一本の木が植えられている横から覗き込むと、さらにその音色は大きくなった。
その音色の方に目を向ける。
そして、同時に大きく目を見開いた。
驚いたというか、始めて見るその建物に見惚れてしまったの。
大きく十字架が立っている真っ白な建物。
それが“教会”だと脳が認識するまでに、少し時間がかかった。
だって、教会なんてテレビでしか見たことないし、少なくともあたしが住んでいた九州の街にはなかった気がする。
強いて言えば、結婚式会場くらいだ。
こんなに普通の場所に、こんなに普通にある教会なんて初めて見た。
気がつけば、フラフラと教会の前まで来ていた。
取っ手に手をかけ、少しだけドアを開けてみる。
すると、教会に響いていた音色が、ふわっと外に漏れてきた。
すごい……
そう思った時――。
すぐ隣で聞こえた物音。
驚いて、手をかけていたドアをパッと離した。
うるさく高鳴る鼓動を抑えながら、音がした方を振り向く。