ひまわり


あたしが迷い込んだこの狭い道には、ぽつりぽつりと両端に木が植えてあった。


まばらに並ぶこの木々が、まるでトンネルのように太陽からの日差しを和らげている。


この都会に珍しく感じる自然が、あたしの心を癒してくれる。


意外と、穴場発見かも。


あまりの気持ちよさに、手を前に翳して空を仰いでいると、ふと、優しい音色があたしの耳に入ってきた。


その小さな音色に耳を澄まし、導かれるようにして歩く。


徐々に音がはっきりとしてきて、これはパイプオルガンの音色だとわかった。


一本の木が植えられている横から覗き込むと、さらにその音色は大きくなった。


その音色の方に目を向ける。


そして、同時に大きく目を見開いた。


驚いたというか、始めて見るその建物に見惚れてしまったの。


大きく十字架が立っている真っ白な建物。


それが“教会”だと脳が認識するまでに、少し時間がかかった。


だって、教会なんてテレビでしか見たことないし、少なくともあたしが住んでいた九州の街にはなかった気がする。


強いて言えば、結婚式会場くらいだ。


こんなに普通の場所に、こんなに普通にある教会なんて初めて見た。



気がつけば、フラフラと教会の前まで来ていた。


取っ手に手をかけ、少しだけドアを開けてみる。


すると、教会に響いていた音色が、ふわっと外に漏れてきた。


すごい……



そう思った時――。


すぐ隣で聞こえた物音。


驚いて、手をかけていたドアをパッと離した。


うるさく高鳴る鼓動を抑えながら、音がした方を振り向く。




< 20 / 339 >

この作品をシェア

pagetop