ひまわり


その時、デパート内で放送が流れ出した。
 

その瞬間二人が敏感に反応して、あたしの胸から顔を上げた。



『迷子のお知らせを致します。黄色いTシャツに、白のスカートをはいた、六歳くらいの女のお子様をお預かりしています。お母様は至急、総合案内所まで、お越しください』


 
その放送が鳴り終わったと同時に、二人はあたしの手をすり抜けてまた走りだした。
 

向かった先は――…。




「パパとママを捜してください」
 

総合案内所だった。


「あら、迷子になっちゃったの?」
 

二人は大きく頷きながら、顔をクシャクシャにして泣き出した。
 

小さな背中が激しく上下する姿を遠くで見ながら、あたしの頬にもとめどなく涙が流れた。


――『パパとママを捜してください』


あの子達……。
 

拭っても拭っても、あたしの頬に涙が伝う。


「すぐに、パパとママ来てくれるからね」
 

――ダメ。

 
そんな事、言わないで……。


「お名前言えるかな?」
 

ダメだよ……。
 

そんな残酷な事しないで。


「優斗と、美穂」


二人は、涙を堪えながら強く答えた。
 

真剣な眼差しで、固く手を握り合いながら……。
 

しばらくして、店内に放送が流れ出した。





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