ひまわり
悪化
二学期が始まって、恭平の目は確実に悪化していた。
いつも通り平凡な日常を過ごしていたあたし達は、そんな事に気付くわけもなくただ、時間に逆らわずに馬鹿ばかりしていた。
だけど恭平の目の症状は、あたし達が考えられない程早く進み、色と光を失ってしまう日は、もうそこまで来ていた。
その足音にちっとも気付いてあげられなかったあたしは――。
夏休みが明けると、学校中お祭りモード一色だった。
屋上から堂々と下がる『甲子園準優勝!』の文字。
快挙を果たした野球部員をたたえようと、朝から全校生徒で拍手喝采した。
「真由、おめでとう」
「ありがとっ。まだ気持が浮いてる感じがするー。
夢だった甲子園に行けて、目の前で戦う先輩たちがいてさ。
もう、ほんっとに幸せ!」
甲子園の熱がまだ下がりきらない真由は、興奮して声を出した。
二学期の教室はなんだか懐かしい感じがする。
たった一か月ちょっと来なかっただけで、机や黒板や友達や教室の匂いが愛おしく感じた。