ひまわり
「負けるなーっ!」
あたしも、真由の隣で外に向かって叫んだ。
9月になっても、窓から吹き込む風は生ぬるい。
あたしと真由はお腹の底から叫んだあと、お互いの目を見てくすくす笑い合った。
その時、「おい」と少し呆れたような声をかけられた。
振り返ると、そこには恭平の姿が――。
久し振りに見る彼の制服姿に、自然と胸が高鳴った。
白いシャツのボタンを全部開け、そこから真っ赤なTシャツが顔を出している。
窓から乗り出していた体を引っ込め、恭平と向き合った。
『こんな所でぎこちなくなるのはやめろっ』と自分に言い聞かせても、不自然に泳ぐ目は簡単には止められない。
そんなあたしを見て、隣の真由は横目でニヤけていた。
足元に視線を落とし、ウエスト付近で指を絡めていると、
「蔵島君、眼鏡にしたんだね」
空気を変えようと、真由が恭平の眼鏡を指しながら言った。