ひまわり
相変わらずの恭平は、ただ無表情で頷くだけ。
そして、廊下を顎で指しながら、彼が素っ気なく言った。
「呼んでる」
真由と同時に廊下に視線を移すと、ドアから顔をのぞかせる平岡先輩がいた。
先輩は真由を見つけると、片手をあげて手まねきをした。
先輩の元に駆け寄る真由と入れ替わり、恭平があたしの隣に来る。
――ドクン…。
「――うっ」
「どした?」
彼が隣に来た瞬間に高鳴った胸を、銃で撃たれたかのように大袈裟に押さえた。
「い、いや、別に……」
あたしはまた窓の外に視線を移し、隣の彼にバレないようにそっと深呼吸をした。
変だ――。
そりゃ、変にもなる。
こいつと、
あの日……キス……。
「――うっ」
今度は、激しく高鳴る心臓が口から出てこないように、両手で口を押さえた。
「さっきから、何やってんの?」
「い、いや、べ、べつに……」
あからさまに目を逸らし続けるあたしを、恭平が怪訝に覗き込んできた。
あ、あたしってば、こんな意識しまくりじゃ先が思いやられるよ……。
あの後も、ほぼ毎日一緒にいたでしょうが。
今更、緊張なんて――…。