ひまわり
激しく高鳴った心臓のせいで奪われた体力を取り戻すため、あたしは机に伏せた。
片方の頬を潰して、ドアの前で話している真由の姿を見ていると、こちらに目を向けた平岡先輩と目が合った。
先輩は、あたしに向かって手を振ってくれて、おまけにあの爽やかな笑顔まで送ってくれた。
真由、これは大変だぞ。
あの笑顔にやられる人、果てしなく多いと思う。
あたしはのっそりと頭をあげて先輩に頭を下げると、先輩の目が、あたしから恭平へと移った。
そしてまたあたしを見て、今度は不敵な笑みを浮かべて『押せよっ!』と、教室に響き渡る程の大きな声で言ってきた。
突然過激な一言を言われて、また心臓が飛び跳ねた。
体が硬直して、目だけを恭平に向けてみる。
まさかあたしの気持ち――
気付かれたんじゃ……。
そう思ったけど、目の前に座る恭平は、あたしの必死な気持ちに気付くこともなく、呑気に欠伸をしていた。
安心して息を吐きながら背もたれに体重を預けると、
「これ」
と、恭平がおもむろにポケットからピンク色の紙を取り出し、あたしに差し出してきた。
「なに、これ」
「いいから、広げてみろ」
言われるがままに二つに折られた紙を開き、また頭を傾げた。