ひまわり


「えらい丁寧に扱われてんじゃねぇか」
 

恭平が、遅れてリビングに入って来た。


「俺も座って待っ――」

「恭ちゃんは、こっちーっ!」

 
恭平が椅子を引いたところで、キッチンからお怒りの声が。
 

キッチンに目を向けると、そこには仁王立ちする優斗君と美穂ちゃんの姿があった。


「ちゃんと、お手伝いするのーっ」
 

恭平は強制的にキッチンに連れていかれ、大ちゃんから渡されたお皿をだるそうに運んできた。


「なんで、俺まで――」
 

キッチンへ届かないように、口の中でこもらせながらぼやいた。

 

テーブルに御馳走が並ぶと、そこからが本番だ。


「ハッピバースデイトゥーユー」
 

御馳走の真ん中にドンと置いたイチゴのケーキに、ロウソクを立ててみんなで歌う。
 

電気を消した薄暗い中で、二人のキラキラした目が、ロウソクの炎でゆっくりと揺らめいた。
 

肩を上げながら恥ずかしそうに笑う二人の顔に、あたしは何度癒されただろう。
 

歌が歌い終わると、二人は大きく息を吸い込んでロウソクの火を消した。


「優斗君、美穂ちゃん、5歳の誕生日おめでとう」
 


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