ひまわり


「ごめんね。何がいいかわからなくて、帽子にしたの。
美穂ちゃんのは、向日葵がイメージで、優斗君は空がイメージで選んだんだ。二人にぴったりでしょ?」

「うん。莉奈ちゃん、大事にする」

 
二人は声を合わせて言ってくれた。
 

あと、もう一つ二人にはプレゼントがある。


「優斗君、美穂ちゃん。
二人にこれ」
 

あたしが差し出すと、二人は不思議そうに包装を眺めて、ゆっくりと開けた。


「クレヨンと画用紙。
クレヨン、もう短くなってたでしょ?だから、これ。二人は絵がすごく上手だから、これでたくさん絵を描いてね」

「うんっ!」

「おまえ、大出費だな」
 

あたしの隣で静かに見ていた恭平が声を出した。


「大事な、二人の為だもん。 ねっ?」
 

少し体を乗り出し二人の顔を覗き込むと、へへっと頬を揺らした。
 

大ちゃんの作ってくれたお子様ランチを、みんなでテーブルを囲んで食べる。
 

暖かい食卓だった。
 

たくさん話をして、笑いながらから揚げを頬張って、ジュースを零したと大声をあげて。
 

あたしが、ずっと憧れていた光景が、今目の前にある。
 

三人でテーブルを囲んで、テレビの音だけの中で食べるいつもとは違う。
 

いつから、家族同士が話さなくなったのかわからない。
 

あたしが最近拒んでいたっていうのもあるけど、帰る度に家の空気が重たくて、誰も目を合わす事はなくて、ただ同じ場所にいて……


最近のあたし達は、家族を取り繕っているだけだった。
 


だからこの温かい食卓が、あたしには贅沢過ぎる気がしたの。



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