ひまわり


大きく息を吸う。
 

恭平の部屋は、とても殺風景だった。
 

男の子の部屋って、散らかってて当たり前だと思っていたけど、恭平の部屋には驚く程何も置かれていなかった。
 

ベッドと、机と、タンスだけ。
 

床に服が脱ぎ捨ててあるとか、漫画が出しっぱなしになってるとか、そんなの全然なかった。
 

意外と、几帳面なの?


「おら、ぼーっと突っ立ってねぇでさっさと探せよ」
 

ベッドの下の引き出しを引っ張って中を掘り返していた彼が、眉間にしわを寄せながらあたしを見上げていた。


「う、うん、ごめん。
あ、机の中、開けていいの?」
 

動揺するあたしは、手のひらが汗ばむのを洋服で拭きながら、彼に聞いた。


「あぁ。
たぶん、すぐ見つかると思うんだけどなぁ。
どこいったかなぁ」
 

独り言を言いながらガサゴソ探し続ける彼を横目で見ながら、机の一番上の引き出しを開けた。
 


――ない。
 

二段目――ない。


三段目――ない。
 

ないです。


てか、引出しの中身も殆ど入ってないじゃん。
 

引き出しは諦めて、机の上や、上の段の本棚の教科書の間も探してみたけど、やっぱりない。
 

ふと、本棚からずらしたあたしの目に、小さなグローブが映った。
 

タンスの上に無造作に置かれているグローブは、今は全く使われなくなった事を物語っている。
 

きれいに掃除されている部屋なのに、タンスの上だけは埃で真っ白になっていた。
 


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