ひまわり


「手術は、成功したんだ」
 

顎ががくがく震えている大ちゃんは、乱れる呼吸を必死に抑えていた。


「だが、もう遅過ぎて、失明するまでの時間を、ただ伸ばすことしか出来なかった…」
 

それまで言ったあと、大ちゃんの涙の量が増えた。
 

次から次に大ちゃんの頬を伝う涙が、廊下を濡らしていく。


「恭平には、莉奈ちゃんには言うなって、言われてた。
だけど、このまま隠し通して行くなんて、俺には、出来ない……」
 

あたしも、涙がとめどなく流れるかと思った。

だけど、あたしの瞳からは一滴も零れなかった。
 

状況を理解するのに必死で、現実味がなくて。
 

ただ、あたしを絶望感が襲ったのは確実で、今、何が起こっているのかさえも、分からなくなっていた。

 
ただ怒りだけが込み上げて、


「嘘だ……。
恭平は、何度か病院に行ったんですよ? その時、恭平は先生から何も言われなかったって!!」
 

大ちゃんに怒鳴りつけた。

こんなこと、声を荒げて大ちゃんに言うべきことじゃないのに……。





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