ひまわり
「最近、自分でもおかしいなって思うところがあったんだ。
視界が狭まる感じもしてたし、一瞬白く見える事もあった。
だけど、まさか自分が病気だって、思わねぇじゃん?」
前髪をかきあげながらハハっと笑った恭平の頬に、一筋の涙が零れ落ちた。
窓から差し込む日差しに反射して、しっかりとあたしの目に恭平の涙が映った。
前髪で涙を隠す代わりに、恭平の嗚咽が微かに聞こえた。
「あと、半年だってよ――。
ほんっとに、笑わせてくれるよ。いきなりそんな事言われて、手術だって騒ぎ出して……
そんなんで実感わくかっての」
恭平がすすり泣く姿を、ただ、見下ろす事しか出来ないでいた。
「ハハっ、俺だせぇ。
震えてるよ――」
前髪をギュっと握り、『くそっ』と唇を噛みしめる恭平の隣に、ゆっくりと腰掛けた。
そっと、抱きしめる。
恭平の震える肩が、あたしの全神経に浸透した。
肩に回したあたしの手に、恭平が自分の手を重ねてきた。
涙でしっとりと濡れた恭平の手を、強く握る。
「――怖いんだ、全てを失うのが」
抱きしめる腕に力を入れて、恭平の肩の上で頷いた。
「手術が終わって、先生から今のうちに点字の勉強をしとけって言われて……」
恭平の吐く息が、震えている。
「この学校にはいられなくなるとか……言われて」
そんな――…。
「今まで通りの生活は出来なくなるとか……。
俺、これから、どうなるんだよ」