ひまわり


「それに、恭平には守るべきものがあるんでしょ?
ただ野球をやってないわけじゃないんだから」
 

あたしが続けると、『そうか』と、彼が微笑んで頷いた。
 

グローブを見つめる時、すごく優しい顔をするよね。

それだけで、お父さんは嬉しいと思うんだ。
 

恭平が、思い出を大切にしてくれているから。






静かな空気に包まれたその時――。
 

突然、廊下を走る賑やかな音が響き渡った。
 

それと同時に、また彼が『あいつら』と、廊下を睨みつけた。


「恭ちゃん、莉奈ちゃんっ!」
 

恭平の部屋に滑り込むようにして入ってきた優斗君と美穂ちゃんを、恭平は上から見下すように、睨んでいた。





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