ひまわり


学校に着いたのは、昼休みだった。
 

目の腫れは引かないままだったが、急に恭平の傍にいたくなった。


「莉奈っ、どうしたの?
そんなに目腫らして」
 

教室に入った途端に心配な顔で聞いてくる真由に、あたしは『うん。』と、素っ気ない返事しか出来なかった。
 

机に鞄を置きながら恭平の席に目を向けると、そこには、いつものように机に伏せて昼寝をする恭平の姿はなかった。


「莉奈、大丈夫?体調悪かったの?」
 

真由が、遠慮がちにあたしを覗き込んだ。
 

だけど、あたしはその事には返事をせず、


「恭平は?」
 

目は恭平の机に向けたまま、早口で真由に聞いた。


「あ、多分保健室」
 

――保健室?
 

その言葉を聞いた途端に、心臓が大きく動いた。


「なんで?なんかあったの?」
 

形相を変えたあたしを見て、真由が不審そうに眉をひそめる。


「体育の時間に怪我して。
今、治療を受けてると思う」

「怪我?」

「たいした事はな……」
 

真由の言葉を最後まで聞かずに、教室を走り出た。




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