ひまわり
「どれ、リンゴでもむこうかね」
おばあちゃんの立ち上がる音が聞こえて、あたしはその隙にリビングのドアを開けた。
あたかも、今あがったかのように。
「あー、すっきりした。
恭平も入っておいでよ。疲れがとれるよ」
「おう、さすがに今日は疲れたな」
恭平が肩に手を置いて、首を回している。
あたしは肩にかけたタオルで髪を拭くふりをしながら、恭平の顔をちらっと見た。
『すごく、大切な存在です』
その言葉を思い出して、下を向きながら思わず笑みが零れた。
翌日。
今日は、小学校やよく遊びに行っていた公園に行こうと、出発の準備をしていた。
夕方までここにいて、家へはゆっくり帰ったらいい。
そう思っていたのに、おばあちゃんの家を出るときに恭平に言われた言葉は、
「帰ろう」だった。