ひまわり


「えっ、なんで?
まだ行ってない所たくさんあるよ」
 

玄関先で恭平を振り返ると、とても柔らかい頬笑みを浮かべていた。


「もう、十分。
サンキューな、案内してくれて。おまえの育った町が見れて嬉しかった」
 

今度は、ニカッと笑う。


「帰ってさ、きっちり話し合うべきだよ」

「――っえ?」

「おまえのばあちゃん、言葉には出さねぇけど、なんとなくわかってたぜ?おまえら家族に何かあるって」
 

恭平は一呼吸置くと、優しい口調であたしを包んだ。


「あんなに優しいばあちゃんを、あんま心配させんな」
 

なっ?と確認するようにあたしを覗き込んで来て、乱暴にあたしの頭をなでた。


「おまえには家族がいるんだから、見せてくれよ。
家族の温かさ」
 

なんだか、あたしはすごくもったいない時間を過ごしているような気がした。
 

悩んでばっかで、なんにも言葉にしなくて。
 

恭平が言うように、あたしには家族がいるのに――。
 

家の空気が重くなった原因は、あたしにもきっとある。
 

現実を避ける為に、あたしはずっと逃げて来たから。
 

心の溝を埋めるように太陽の家に行っていたけど、このままでいいとは思えない。


ていうか、思いたくない。
 

あたしが、変えていかなきゃいけないんだ。




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