ひまわり
「――おばさん」
あたしの頭上で、恭平の低い声がする。
「俺、蔵島恭平と言います」
恭平が、あたしの肩からゆっくりと手を下ろして、あたしの前に出てきた。
そして、深々と頭を下げる。
「すみませんでした。
俺が、こいつを連れ出したんです。一晩家を空けるような事して、本当にすみませんでした」
――恭平。
恭平が、息を深く吐きながら頭を上げた。
「おばさん、こいつを連れ出したのには、理由があります。
こいつ――」
「知ってるわ」
恭平の言葉に重なって、お母さんが静かに声を出した。
あたしは恭平と同時に、お母さんに目を向けた。
「おばあちゃんから、連絡があったのよ」
えっ……?
「莉奈が、突然こっちに来るって言いだしたって――。
莉奈、ごめんね」
太陽の光に反射して、お母さんの瞳に光るものが見えた。
ごめんねという言葉を聞いた瞬間に、鼻の奥がツンと痛くなった。
「おばあちゃんにね、言われたの。
莉奈は相当悩んでるって。あんたら夫婦の間に何かあるんじゃないかって……。
あんたらは、大事な娘にあんな顔をさせる為に引っ越しをしたのかって……」