ひまわり

気配



太陽が、あたし達の頭上から遠ざかり、空にはうっすらと雲がかかっていた。
 

吐く息が白くて、手袋をつける手がかじかんだ。
 

恭平に告げられた半年という時間は、あたしが想像していた以上に短いものだった。
 

一日一日が早過ぎて、あたしは歩くだけで精一杯。
 

町中が白く染まるに連れて、恭平の症状も悪化していった。
 

本当に半年しか時間がなくて、あとほんの少しで、恭平の眼は、視力を失う事になる。
 

恭平の調子のいい時には病気の事なんて忘れてしまうほど、恭平は明るかった。
 

絶対に笑顔を絶やさなかったし、今までと何ら変わりなく生活をしてきた。
 

まさか、彼が重い病気にかかっているなんて誰も思わないだろう。
 

あたしだって、彼を支えると決めて、今はもう涙は流さなくなった。


『もう、一人で泣かないでくれ』
 

そう恭平とも約束をして、あたしは強く生きようと心に固く誓ったんだ。
 

だけど、時々恭平が眩しさに顔を伏せたり、頻繁に出来る口内炎に苦しんでいる姿を見ると、胸が締め付けられた。
 



< 306 / 339 >

この作品をシェア

pagetop