ひまわり
「蔵島君、重い病気なんだって?」
どう、返事をしたらいいのか、戸惑った。
「あいつが、言ったの?」
目を泳がせると、あたしの視界の隅で真由が頷いた。
あたしが言葉を無くすと、真由が『本当だったんだ』と、今にも消えそうな声で呟いた。
「蔵島君、あたしに真剣な顔して言ったんだ。
もし、自分のせいで、これから莉奈が泣くような事があったら、莉奈の傍にいてやってくれって。
莉奈は、誰にも言わずに一人で苦しむ奴だからって――」
真由の語尾は、静に廊下に落ちた。
あたしの隣に腰かけて、スカートを両手で押さえた。
「あたし、信じられなくてさ。
冗談だって思っちゃって。だけど、蔵島君の目は真剣で、必死に莉奈をよろしく頼むって、何度も頭を下げてきて……」
――あいつ。
「これから先、自分は守りたいときに守ってやれなくなるからって、すごく切ない目をしてた。
ねぇ、莉奈。あたしに何か出来る事ないかな。蔵島君の為に」
真由は、力強くあたしの腕を握った。
制服を通しても、真由の手の冷たさが伝わってきた。
「あいつね、あたしに言ったの」
出した声がかすれた。